普段、何気なく使っているナイフやフォーク、キッチン用品、さまざまな金属製品。
それらが「どこで」「誰によって」「どのように」作られているのか、考えたことはあるでしょうか。
新潟県燕三条地域では、普段はなかなか見ることのできない工場を訪れ、ものづくりの現場を実際に見学・体験できる「工場の祭典」が開催されました。
「新潟ものづくりびと」は、今回の工場の祭典2026を実際に訪問。
工場の中を見学し、来場者の様子を見ながら、参加企業の方々にもお話を伺いました。
この記事では、当日の現地の様子とともに、吉川金属株式会社と山崎金属工業株式会社へのインタビューを通して見えた「工場の祭典」の魅力をお伝えします。
工場の祭典は「ものづくりの現場」に入れるイベント

工場の祭典の大きな魅力は、完成した製品を見るだけではなく、実際に製品が生まれている現場に入れること。
普段なら外から見ることしかできない工場の中に入り、機械が動く様子や材料、製造工程、そこで働く人の姿を見ることができます。
実際に現場に立ってみると、普段使っている製品の見え方も少し変わります。
例えば、完成したステンレス製品を見ても、その材料がどれほど大きな状態で工場に運ばれてくるのかは分かりません。
ナイフやフォークを手に取っても、そこにどれだけの工程や職人の技術があるのかを普段から意識することもないでしょう。
工場の祭典では、そうした「完成品になる前の世界」を直接見ることができます。
【インタビュー】吉川金属株式会社|ものづくりを支える「縁の下の力持ち」

ステンレス鋼材を扱う吉川金属株式会社。
工場の中には、大きなステンレスコイルが並び、普段の生活からは想像できないほどのスケールの材料が扱われています。
そんな吉川金属株式会社の諸橋さんに、工場の祭典への参加理由や、来場者に伝えたいことについて伺いました。

――工場の祭典に参加するようになったきっかけを教えてください。
最初は「社員教育」というところが大きかったですね。
一般の方にステンレスの材料を直接販売するわけではないので、どうやって自分たちの仕事を外にPRできるか、というところから参加してみようとなりました。
営業、総務、生産、業務課など、普段は異なる部署の社員を集めてチームを作り、工場の祭典の運営を任せています。
――普段の仕事とは違う経験になるわけですね。
そうですね。
普段、お客様と話す機会があるのは営業など一部の社員が中心ですが、工場の祭典では、普段外の人と話す機会が少ない社員にも、自分の仕事について説明してもらいます。
「このラインでは、ここに気をつけています」
「こういう仕事をしています」
と、自分の仕事を外に向けて説明しようとすると、改めて自分の仕事を理解する必要があります。
そういう意味でも、自分たちの仕事を一度見つめ直す機会になっています。
――来場者からはどんな反応がありますか?
やっぱり一番多いのは、ステンレスの大きさに驚かれることですね。
普段、ステンレスというと洋食器やキッチン用品など、完成した製品を見ることが多いと思います。
でも実際には、7トン、10トンという大きなコイルが材料として入ってきて、それを大きな機械で加工していきます。
その迫力には、毎年皆さん驚かれています。
7トン、10トンと言っても、なかなかイメージしづらいので、以前から「アフリカゾウ一頭くらいの重さ」という説明をしていました。
最近では実物大のアフリカゾウのタペストリーを置いて、コイルと同じくらいの重さだと説明しています。


――工場の祭典を通して、来場者に一番伝えたいことは何でしょうか?
最終製品だけではなく、その前にどういう工程があるのかを知ってほしいですね。
様々な種類のステンレスが運ばれてきて、加工されて、そこからプレスなど何工程も経て、最終製品になって、お客様の手元に届く。
一つの製品ができるまでに、それだけたくさんの人や工程が関わっています。
そこにどれだけの付加価値があるのかということを、知ってもらえたらと思っています。
一般の方からすると、ステンレスの材料屋という存在自体、なかなか知られていません。
でも、普段使っているものの「最初の材料」がどこから来ているのかを知ると、また違った見方ができると思います。
――ものづくりの面白さとは?

私たちは最終製品を作っている会社ではないので、なかなか表には名前が出てきません。
いわば「縁の下の力持ち」です。
自分たちが届けた材料が製品になって、それが世の中で役に立っている。
「この材料は、うちの会社が入れた」と思えることが、ものづくりの面白さだと思います。
自分たちの会社の名前が製品に出るわけではありません。
それでも、自分たちが関わったものが世の中で使われている。
そこにやりがいを感じています。

【インタビュー】山崎金属工業株式会社|洋食器づくりの技術を、見て、触れて、知る

続いてお話を伺ったのは、ナイフ・フォーク・スプーンなどの洋食器を手がける山崎金属工業株式会社。
工場の祭典には初年度から継続して参加している企業です。
なぜ長年にわたって工場の祭典に参加しているのか。
そして、来場者にどんなことを感じてほしいのか。
山崎金属工業株式会社の代表取締役副社長である山崎さんにお話を伺いました。

――工場の祭典には初年度から参加されているそうですね。
そうですね。ずっと参加しています。
最初は「工場の祭典って何なんだろう?」というところからでした。
でも、そもそも観光がない街に「産業を使った観光」ができるというのが面白いと思ったんです。
僕たちが作っているナイフ、フォーク、スプーンは、もともとヨーロッパやアメリカの文化から来たものですよね。
でも、日本製のものについては、意外と日本人自身が知らない。
燕はナイフ、フォーク、スプーンの産地なのに、そのことを知らない人も多い。
燕の職人さんたちが本気で作っている商品の良さを伝える機会は、なかなかありません。
だから、一般の方が直接工場に来てくれて、僕たちと話ができる工場の祭典は、すごく貴重な機会だと思っています。
――来場者には、どんなことを感じてほしいですか?
「こんなに手をかけて作っているんだ」ということを感じてほしいですね。
ボタンを押せば勝手にものができると思っている人もいるかもしれません。
でも実際には、多くの人が携わっています。
職人さんがいるからこそ、海外にも負けない品質がある。
そこを感じてもらえたらと思っています。
――実際に製品を体験してもらうことで、反応も変わりますか?

全然違います。
実際に使ってみると、使い心地の違いが分かります。
以前体験した方から、「レストランに行く度に、食器を確認するようになりました」と言われたこともあります。
それが面白いんですよね。
今まで何気なく使っていたものを、気にするようになる。
「このスプーンはいつもと違うな」とか、「このフォークはどうなんだろう」とか。
そうやって洋食器そのものに興味を持つ人が増えていくことが、僕たちにとってはすごくうれしいことです。
――工場の祭典は、社員の皆さんにとっても意味があるイベントなのでしょうか?
すごくあります。
普段ものを作っている人たちは、自分たちの仕事はスポットライトが当たらないところだと思っているかもしれません。
でも、工場の祭典に来る人は、そこで働いている人たちを見たいと思って来てくれる。
自分たちの仕事に興味を持って、わざわざ見に来てくれる人がいる。
それを知ることで、「自分たちがやっている仕事って、実は見てもらえているんだ」と感じてもらえるんです。
また、会社全体でイベントを運営するので、普段は別々に仕事をしている部署も一緒になって動きます。
そういう意味でも、会社として一つになる良い機会になっています。
――工場の祭典を通して、燕三条についても知ってほしいという思いがありますか?
もちろんあります。
僕たちの会社は、工場の祭典という大きなイベントの中の一つの会社にすぎません。
でも、僕たちの工場に来たことをきっかけに、
「せっかくだから他の会社も見てみよう」
となってくれたら、それだけでも地域にとって意味があると思います。
燕三条に来て、いろいろな工場を見て、「この地域ってすごいな」と感じてもらえたらうれしいですね。
――これからも伝えていきたい「ものづくり」とは?

昔から「人より良いものを作りたい」というのは、会社の伝統としてあります。
良いものを作り続けること。
そして、その価値をちゃんと伝えること。
日本人にしかできないものづくりを大切にして、それを次の世代につないでいきたいと思っています。
僕たちは単純に道具を売っているつもりではなくて、生活に潤いや豊かさを提供したいと思っています。
料理を作ることはできませんが、「最後の一口には責任がある」。
その最後の一口を、世界中の人においしく、幸せに食べてもらえるような道具を作っていきたいですね。

工場の祭典で見えてきた、燕三条のものづくりの魅力
今回、吉川金属株式会社と山崎金属工業株式会社を取材して感じたのは、ものづくりの魅力は一つではないということです。
吉川金属は、製品づくりに欠かせない材料を供給し、ものづくりの土台を支える仕事です。一方、山崎金属工業では、洋食器という身近な製品を通して、職人の技術や使い心地の魅力に触れることができます。
一方は材料からものづくりを支え、もう一方は完成した製品を通して技術を伝える。役割は異なりますが、どちらも燕三条のものづくりを支える大切な存在です。
普段、私たちが目にするのは、完成した製品であることがほとんどです。しかし、その背景には、材料を扱う企業や加工に携わる人、技術を磨き続ける職人など、多くの仕事があります。
工場の祭典は、そうした普段は見えにくい仕事に触れ、つくり手の話を聞くことができる機会です。
工場を訪れる前と後では、いつも使っている製品の見え方も少し変わるかもしれません。
燕三条のものづくりを知ることは、製品だけでなく、それを生み出す技術や人、地域の産業を知ることでもあります。
工場の祭典をきっかけに、身近な製品の背景にあるものづくりにも目を向けてみてはいかがでしょうか。
まとめ|工場の祭典2026で知る、燕三条のものづくりの魅力


工場の祭典2026では、普段はなかなか見ることのできないものづくりの現場を訪れ、製品が生まれるまでの工程や、そこに携わる人たちの想いに触れることができます。
今回取材した吉川金属株式会社では、ステンレスなどの材料を供給する立場から、ものづくりを支える仕事の役割や誇りが語られました。一方、山崎金属工業株式会社では、カトラリーの品質へのこだわりや、実際に製品に触れることで生まれる新たな発見について話を伺いました。
2社の取材を通して見えてきたのは、燕三条のものづくりが、製品そのものだけでなく、材料を支える仕事から細部まで品質を追求する仕事まで、多くの人の技術と想いによって成り立っているということです。
工場の祭典は、ものづくりの現場を見学するだけでなく、普段使っている製品の背景を知り、地域の産業をより身近に感じられる機会でもあります。
燕三条のものづくりに興味がある方は、ぜひ工場の祭典を通して、現場で働く人たちの技術や想いに触れてみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)|工場の祭典について
Q. 工場の祭典とは?
工場の祭典は、燕三条地域を中心としたものづくりの現場を訪れ、工場見学や製造工程の見学、ものづくり体験などを通して地域の技術や仕事に触れられるイベントです。
Q. 工場の祭典では何を見ることができますか?
参加企業によって内容は異なりますが、実際の工場や製造設備、材料、製造工程、職人の仕事などを見ることができます。製品を実際に触ったり、体験したりできる企画もあります。
Q. 工場の祭典の魅力は何ですか?
完成した製品だけでは分からない、製造工程や職人の技術、そこで働く人の想いを直接知ることができる点です。
Q. 工場の祭典は子どもでも楽しめますか?
参加企業や企画によって内容は異なりますが、実際の工場を見ることで、普段使っている製品がどのように作られているのかを知るきっかけになります。
Q. 工場の祭典をきっかけに、ほかの工場も見学できますか?
工場の祭典にはさまざまな企業が参加するため、一つの工場を訪れたことをきっかけに、別の企業や工場にも興味を広げられるのが魅力です。
企業情報
吉川金属株式会社の事業内容や採用情報について詳しく知りたい方は、公式サイトもぜひご覧ください。
| 企業名 | 吉川金属株式会社 |
| 所在地 | 新潟県燕市吉田法花堂1961番地 |
| 創立 | 1946(昭和21)年 9月19日 |
| 事業内容 | ステンレス鋼材/三層鋼/各種クラッド/チタン/非鉄金属類/板・棒・管の加工販売 |
| 公式サイト | https://www.stainless-steel.jp/ |
| 公式SNS | 公式Instagram |
山崎金属工業株式会社の事業内容や採用情報について詳しく知りたい方は、公式サイトもぜひご覧ください。
| 企業名 | 山崎金属工業株式会社 |
| 所在地 | 新潟県燕市大曲2570番地 |
| 創業 | 1918年 |
| 事業内容 | 金属洋食器の製造・販売、器物・刃物類の製造・販売など |
| 公式サイト | https://www.yamazakitableware.co.jp/ |
| 公式SNS | 公式Instagram |
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